あたまのなか研究室

ピクルス(2代目)とぶらいあん(初代)の研究室です。

2013-01-01から1年間の記事一覧

梅田ガーデンシネマ閉館の「後」を考える(さらに、その「後」付き版)

2014年2月28日に梅田ガーデンシネマが閉館したあと3月1日から新しい映画館がオープンします。 では新しい映画館はどういうことになるのか、を考えてみたいと思います。 ユナイテッドシネマから会社自体が移譲され、運営スタッフも全員交代するとい…

【号外】梅田ガーデンシネマ閉館に関するQ&A

クリスマスイブのTwitterには、梅田ガーデンシネマが来年2月で閉館するという話で持ち切りでした。 私が最初にミニシアターの、というか映画館の会員になった愛着ある劇場で、以来10年以上会員となって通いつめました。これまで観た数百本の良質なヨーロ…

大阪ヨーロッパ映画祭『わたしの名はジン』

第20回大阪ヨーロッパ映画祭にて上映された『わたしの名はジン』(レハ・エルデム監督)について、初上映から7日目にしてようやく書く。(映画祭での2回の上映が終り、当分の間日本では観る機会がないと思われるため) 本作は、現在のところ、日本におい…

『トランス』とダニー・ボイル

今回観客に評判のよいダニー・ボイル監督『トランス』を観たので、それについて少し。 今回は娯楽作品としてよく出来ている。コン・ゲームとして気持ちよく騙される感じは近年のこの種の作品の中では良い出来だと思う。 しかし不満もある。 その不満において…

『はじまりのみち』所感

先日観た『はじまりのみち』について、いくつか思ったことがあったのでここに書いておくことにする。 ひとことで言うと「山を越える」だけの話なのだが、ただそれだけで「母への愛」と「母の愛」を表現したところがすごい。 木下恵介役の加瀬亮の感情を抑制…

30年後の『家族ゲーム』

先日、塚口サンサン劇場で観た『家族ゲーム』について。 何しろ有名な作品であり何を今さら的な話になるが、存在をずっと知っていながら初見なので少し書くことにする。 (まあ最近は、公開当時から知っていてようやく観た映画が多いのですが) この映画は一…

捏造される記憶、抑圧される体験〜『お早う』におけるある夫婦の「戦争」と「戦後」

小津安二郎『お早う』は、新興住宅に住む4つの家族が主な主軸となっている。 同じ住宅に住むアプレ夫婦は途中で退場してしまうので数に入れない。 4つの家族には4人の子供いる。しかし話の中心となる笠智衆の一家は2人兄弟なので、1つの家庭だけ子供が…

8月のある日観たふたつの映画

朝、梅田ガーデンシネマで『ひろしま 石内都・遺されたものたち』を観る。 広島に原爆が投下された時に遺された遺品数十点。 古い写真では何度も見てきた「ひろしま」の映像が、そのとき存在した「もの」として目の前にあるとき、六十何年という時間を越えて…

小津安二郎『晩春』について

『晩春』を観た。まったく初めてである。『麦秋』も続けて観た。これも初めてである。 そもそもこの時期の小津作品は『東京物語』ぐらいしか観たことがないのだ。 何となくではあるが『秋刀魚の味』のごとく「妻に先立たれた父親のために独身を貫く娘の話」…

キンドル、期間限定値下げ 

AmazonのKindle Paperwhite を購入したのは昨年のクリスマス(であることはすっかり忘れていたが、わが秘書「ついろぐクン」がしっかり憶えていてくれるので助かるの)であった。 これは、Amazon.comでその二年前に購入したKindle3以来2度目の購入である。 …

いま、迫ってくる映画『智恵子抄』

シネ・ヌーヴォの田中登特集、またまた岩下志麻の主演作について。 『智恵子抄』は、2年ぶり2回目の観賞。岩下志麻の狂気ぶりは、2回目でも充分衝撃的だが、丹波哲郎の愛妻ぶりも目を引く。あまり彼らしく(?)ない、非常に抑えた演技で、クセの多い役が…

『古都』にみる「双子化の技術」

『古都』(中村登監督、岩下志麻主演、1963)はおそらく世界で最も有名な日本の双子映画ではないかと思う。秀作であることに異論はないが、気になる点がある。今回観たのが2回目なので今までに気がついたことについてここに書いておくことにする。 日本…

夏八木勲さんと京都映画祭

夏八木勲さんを初めて(であり最後でもありますが)拝見したのが昨秋の京都映画祭でした。 しかし、トークゲストで登場された際、出てくるのに少し時間を要したこと、トークは他のお二方(山根貞男氏、中島貞夫監督)にほとんどまかせてほとんど最初と最後し…

字幕に「新訳・改訳」は必要か?

「30年くらいまえの字幕は古すぎるので新しい字幕にすべきだ」というような意見を少し前にみかけたので、この件について考えてみる。 確かにこの文章だけみればとてももっともらしい考えのように思える。 これは「昔の字幕は当時の言語感覚で書かれている…

恐るべき「大ヒットソング」映画『帰って来たヨッパライ』

大島渚監督作品『帰って来たヨッパライ』は、当時大ヒットしたフォーク・クルセダーズの曲をフィーチャーし、グループのメンバー3人が主演、ビートルズ映画を模したGSグループの「何かの騒動に巻き込まれる逃走劇」というアイドルグループ映画的構造を用い…

『恋するミナミ』ファースト・インプレッション

今年の大阪アジアン映画祭で、自分にとってはクライマックスに相当する映画、リム・カーワイ監督の新作『Fly Me to Minami〜恋するミナミ』(ワールドプレミアバージョン)を観ることができたので、それについて少し。 一言でいうと、前作『新世界の夜明け』…

『ゼロ・ダーク・サーティ』が、アカデミー賞を逃した理由

キャスリン・ビグロー監督作『ゼロ・ダーク・サーティ』について書く。 しかしその前に前作『ハート・ロッカー』について書かないといけないだろう。 『ハート・ロッカー』は、「リアルにイラク戦争を描いた戦争アクション、社会派ドラマ」というのが一般的…

彼が愛しているのは、その岩の固まりではないのです。

彼が愛しているのは、あの岩の固まりではありません。 彼が愛しているのは、誰も住んでいない「国土」と呼ばれる場所ではありません。 彼が愛しているのは、ただ自分自身です。 「国土を失うこと」を「自分の何かが奪われること」と思い込んでいるだけの人で…

『高校生ブルース』にみる1970年の引き裂かれ方

えっと、タイトルに書いた通りです。 と言ってしまうと終わってしまうので、もうちょっとだけ書く事にする。 『高校生ブルース』を観ると、冒頭のクレジット、音楽、セリフ回しと、まるで1960年頃の映画そのものであることに驚く。 「たった10年」と思…

ぶらいあんが選ぶ2012年映画ベスト10<完全版>

研究室をご覧頂いているみなさま、新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。 (※お詫び〜この文章は1月4日に収録されました〜よ〜ん) 昨年に引き続きまして、映画ベスト10を発表致します。 2012年は前年と同等か少し多…

まだ読んでいない『ロバート・アルドリッチ大全』

『ロバート・アルドリッチ大全』(1995,アラン・シルヴァー、ジェイムズ・ウルシーニ著/宮本高晴訳/国書刊行会)が届きました。 原題は"What Ever Happened to Robert Aldrich?:His Life and His Films"(何がロバート・アルドリッチに起こったか?:人と…

わけのわからない映画『鳥』

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。 さて、早速本題です。ヒッチコックの『鳥』は、映画における「恐怖の対象」を「人間」から「別の存在」にしたという意味で画期的でありますが、「動物」ということだけでなく「大自然」でも…