あたまのなか研究室

ピクルス(2代目)とぶらいあん(初代)の研究室です。

映画(アーカイブ)

サミュエル・フラーの『ホワイト・ドッグ 魔犬』について

サミュエル・フラーの映画を13、4本ばかり観たところで、現時点では最高傑作だと思う『ホワイト・ドッグ 魔犬』についてのTwitterでのコメントを以下に再録しておきます。短いですが。 ちなみに、本作は長年にわたって本国では劇場公開されず、2008年…

アカデミー賞と、それを求める人々

アカデミー賞『アーティスト』や『ヒューゴの不思議な発明』において、映画の原点に立ち返ろうとする作品が評価されるというのはハリウッドのある志向の限界を現しているように見えます。「新しいとされるものほど凡庸で新しく見えず、古いものほど新鮮で新…

これもまた見えない現実『ネムリユスリカ』

シネヌーヴォ『ネムリユスリカ』「レイプされた後の女性の人生」「貧困から家を失った家族の人生」「車上生活における要介護者の人生」これら現実に存在するにも関わらず目をそらされる人々について描いた作品。閉じられた家族の息苦しさ危うさに何度もハッ…

ついに観た『サウダーヂ』

『サウダーヂ』ようやく観ました。主な主人公は郊外都市で働く「土方」の二人。一人は現実の問題から目をそらし享楽の日常、一人は問題を外側のものと認識し攻撃する。享楽者は逃避を夢みて、攻撃者は怒りの矛先を見誤る。今まで描かれることのなかった郊外…

『タンタンと私』

「タンタンと私」最終上映に滑りこみ。さんざんツイート評をみていたものの想像以上に過酷なタンタン人生。ナチス問題もあるけれど、週刊連載に追われて逃げたり病んだりはのちの日本の悩める漫画家の開祖のよう。晩年に心の友に再会できたのがよかった。今…

『私だけのハッピー・エンディング』

シアターセブンでやるというので札幌で観た「私だけのハッピー・エンディング」(原題:「ちょっとだけの天国」?)の話を。題名から女性向きの甘めロマンス映画かと思いきや、主人公が死期に直面してどう生きるかという話。コメディタッチで楽しめます。ウ…

映画『キツツキと雨』

「キツツキと雨」。味のあるシチュエーションコメディ。とにかく役所広司、オープニングから特に前半、これだけでごはん10杯くらいいけそうな感じ。いやもうそれだけで充分です。 (2012年2月22日、ぶらいあんのTweetより) キツツキと雨 ブルーレイ …

アメリカにおける「映画」について

Movieって「動くやつ」ですよね。「あの動くの観に行こうぜ!動くやつ2枚!」とか。Talkieは「しゃべるやつ」「今度のしゃべるやつは歌がスゴいらしいぜ。しゃべるの3枚!」。映画は見せ物。米国では感覚的に根付いているので高尚なFILMなんて言葉を一般人…

圧倒的な憂鬱『メランコリア』

「メランコリア」。これは「世界が終わろうとするとき家族はどう振る舞うか」を描いたホームドラマです。世界の終わり方自体は重要ではありません。この構造、重苦しさ、これは日本が誇るホームドラマの極北「世界大戦争」('61)以来の秀作。このあまりの息…

「サウダーヂ」上映中止事件の真相

「サウダーヂ」ホントは11月に観るはずでした。大阪の映画祭で上映予定が直前に中止。まさか上映中止圧力!?と思ったので、事務局に問い合わせると・・事務局が用意したのがデジタルプロジェクターだったため、フィルム上映にこだわった制作者側と折り合…

日本の女優について

最近HDDに無差別録画している「徹子の部屋」で、時々ピックアップしてみるようにしていて、先月末放送の月丘夢路さんをみたんですが、若い!とても90歳には見えない。若さの秘訣はイケメン好きらしいです。最近、80代後半でなくなる女優さんが多いので元…

淡島千景さんの訃報に接して

淡島千景さんの訃報に最初あまり心が動かなかった。近年黄金期の映画を何十本も観ていたにも関わらず。自分は淡島千景が好きではない、とずっと思っていたけれど、本当は好きでなかったのは淡島千景の役どころだったと今気づいた。男に弱い少し抜けた所のあ…

続・塚口サンサン劇場についての3つのツイート

その映画館で、ついにアレを初体験。映画を映画館で少なからず観ているとガラガラのときがよくあるが、それでもなぜか3、4人はいる。一人だけ、というのはなりそうでなかなかならない。それが今回遂にそうなってしまった。貸し切り上映、それが「ニッポン…

塚口サンサン劇場についての3つのツイート

大阪の映画観客界では知る人ぞ知る(知らぬ人は全く知らぬ)天六ユウラク座。昨年ここでしか公開されなかった為に見逃した(方も多いであろう)あの「ザ・ウォード」が、3月に塚口サンサン劇場で公開される!なんてカユイところに手が届く、至れりつくせり…

映画『ドラゴン・タトゥーの女』

「龍の彫り物がある少女」。バッシング中の魅惑の金髪中年ジャーナリストと情緒表現に難ありで天才の”女ザッカーバーグ”が、一族の呪いを暴こうとする、アメリカン・スウィーディッシュ横溝正史シリーズ第一弾。お見事!お話は猟奇的だが実際の猟奇描写は多…

TOHOシネマズ梅田シアター10の謎

TOHOシネマズなんば、と梅田のスケジュールサイトを見ると、みんな「デジタル」か「3D」。要するにどっちもデジタル。ただし梅田のシアター10(別館で午前十時はほぼここ)のみ上映の作品は「デジタル」ではない。ひょっとしてここだけデジタル上映機器対…

『マイティ・ウクレレ』を観て思ったこと

「マイティ・ウクレレ」を観てふと思った、ハワイと沖縄との類似性。陽気で素朴で穏やかな人々、独自の言葉とユニークな文化、音楽、楽器。そして大国に侵略・併合され、観光地化&軍事拠点とされ現在に至る。戦争で唯一本土攻撃されたハワイと、唯一本土上…

『ロボジー』

「ロボジー」。よくできたコメディです。この映画は「テクノロジー信仰の破綻」と「永久(経済)成長幻想の歪み」そして「高齢化社会の孤独」について時に冷ややかに時に暖かく描いています。前2者と後者は無関係ではありません。最新技術優先、効率優先、…

『ヒミズ』

「ヒミズ」にはある言葉が出てきます。それは主人公にとっては無意味な人物が放つ陳腐で空疎な言葉です。しかし言葉は「誰によって」「どんな状況で」発せられるかによって異なる意味を持ちます。つまり、これは最初に登場した意味のない言葉が最後に重要な…

『善き人』

「善き人」。不本意ながらナチスに入党した大学教授で文学者の視点からユダヤ人弾圧を描いた作品。明確に語られないが主人公は精神疾患を持ち自分にとって重大な状況に陥ると音楽的幻覚を見るのですが、それが奇妙にシュールで面白い。この映画は「抑圧状況…

『ルルドの泉で』

「ルルドの泉で」。この映画は「幸運(ひいては幸福)の相対性」について描いています。誰かに幸運が訪れると誰かに不幸が訪れる。そしてそれは誰の状況においても互換が可能です。だから人々は他人の不幸を期待する。幸運になった人は不幸を恐れる。人生に…

元町映画館『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』

今日は、あの映画のリベンジの為に、元町映画館に初めて行ってきました。噂どおり、ちっちゃい、というかコンパクトなエントランス。カウンター&ロビー&トイレ4つをぎりぎり絶妙に配置。しかし劇場に入れば意外と広い。椅子もふかふか。ひな壇がちょっと…

行きつけの映画館を!

シネヌーヴォ、会報によると去年は一昨年より若干上昇、それでも毎年赤字とのこと。特集上映が盛況でも赤字なのは、他の入りがイマイチということ。もしあなたがシネヌーヴォ好きなら何度でも足を運びましょう。特にロードショー作品や、シネヌーヴォXの番組…

『しあわせのパン』の不思議世界

「しあわせのパン」は「ジブリアニメの絵コンテに忠実に、風景と俳優と動物で再現した(かのような)映画」でした。それなら焼きたてのパンの湯気がCGなのも納得。郵便は切手なしで個人に届くしどうやら貨幣経済でなさそうな不思議世界。ジブリは現実の再解…

ドキュメンタリー映画『ようこそ、アムステルダム国立美術館へ』

シネヌーヴォX「ようこそ、アムステルダム国立美術館へ」。要するに美術館改築騒動記なのですが、本来の騒動の面白さに加え、美術館員の建築、絵画、彫刻に対するまなざしが魅力的。特に修復師の作業は、芸術的職人作業であり、戦争であり、時にセックスのよ…

映画『ブリューゲルの動く絵』

シネヌーヴォ「ブリューゲルの動く絵」。一枚の絵にこれだけの物語を描ききった画家もすごいが、たった一枚の絵からこれだけの世界を再現させた制作者もすごい。16世紀の生活模様の悲哀が、奇妙にリアルさと迫力をもって描かれる。映画を観た後に、劇場に…

シネ・ヌーヴォの今井正特集より『また逢う日まで』

シネヌーヴォ【今井正特集】「また逢う日まで」。有名なメロドラマなので、戦争を背景にした恋愛物くらいに思っていたので驚いた。メロドラマ以上に戦争映画だったのだ(ちなみに「戦争と青春」でも似た状況が描かれる。また娘の名前が螢子)。杉村春子が絵…

映画『歴史は女で作られる』

シネヌーヴォ「歴史は女で作られる」。呪われた映画こと、マックス・オフュルス監督の遺作で、実在の19世紀の踊り子の女一代記。興行不信から改変されたフィルムを復元しリマスターした映像が美しい。シネスコで壮大な美術と色彩にただただ圧倒される。何…

ドキュメンタリー映画『普通に生きる』

シネヌーヴォ「普通に生きる」。予告篇が感動を強要する感じで違和感があったのですが本編はとてもよかった。重度障害者の現状が淡々と描かれる中で社会参加・自立とは、と新たな知見を得る事ができた。家族や周りにそういう状況がない人ほどこのドキュメン…

シネコンとミニシアター

「ヒミズ」について書こうと思ったけど、それより。ミニシアターでは週末満席というこの映画が、最大手シネコン(の最大ホール)で上映されている平日(会員サービスデイ)19時前の回で観客は4人。完全にリサーチミス。ミスマッチの理由は、シネコン多数…