あたまのなか研究室

ピクルス(2代目)とぶらいあん(初代)の研究室です。

アカデミー賞と、それを求める人々

 アカデミー賞『アーティスト』や『ヒューゴの不思議な発明』において、映画の原点に立ち返ろうとする作品が評価されるというのはハリウッドのある志向の限界を現しているように見えます。「新しいとされるものほど凡庸で新しく見えず、古いものほど新鮮で新しく見える」ということです。

 長年ハリウッドは「新しさをウリにするという古い方式」に依存、「優れたオリジナル脚本の枯渇」と相まって「新しい続編!」「新しいリメイク!」という一見すると新しいのか古いのかよくわからない、パッケージだけを新しくした旧作の再生がヒット作の大半を占めていることからもそれが言えます。

 外国語部門では『別離』が受賞しました。アスガル・ファルハーディー監督は前作『彼女が消えた浜辺』が現代の濃密そうに見えて実は希薄な人間関係を描いた傑作だったので非常に嬉しい受賞。それはいいのですが、また上映予定のミニシアターが大混雑するのがミエミエなのでそれだけがちょっと憂鬱です。

 アカデミー賞を受賞した作品には観客が殺到します。これは芥川賞直木賞受賞作品が売れるのと同じで理由がふたつあります。ひとつは権威に弱い人が多いということ。もうひとつは(これが重要なのですが)映画にしても小説にしても、多くの人は何を選んだらよいか判らず指針を求めているということです。

 これは、人々が「太鼓判」を求めている、ということです。こういったものは本来、試行錯誤を重ねて自分好みの作品を見つけていくものですが「失敗したくない(=イヤな気分を味わいたくない)」「失敗している時間がない(=プライベート時間をも効率化)」という心理が見え隠れしていると思います。

 (2012年2月28日、ぶらいあんのTweetより。一部加筆・修正)



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