あたまのなか研究室

ピクルス(2代目)とぶらいあん(初代)の研究室です。

TOHOシネマズ梅田という奇妙なシアターの"理由"

 【訂正】2016.04.30 事実関係の誤りがあり、文中を訂正致しました。

 TOHOシネマズ梅田。大阪市キタエリアにあり関西、特に大阪に住む人なら利用する方も多いと思われるこの劇場について。
 何かおかしいのではないか、と思ったことのある人、特に若者には多いのではないかと思います。

 妙に小さいシアター。横長で妙にひらべったく圧迫感のあるシアター。かと思えば縦長で後ろに座るとスクリーンまでが異常に遠いシアター。

 なぜこんなことになっているのか、と思った人は多いでしょう。ある年齢以上の方なら事情を知っているかもしれませんが、10代から20代の若者にはさっぱり理由がわからないのではないでしょうか。

 今回は、それについて書いてみることにします。
 (「そんなことくらい知ってるよ!」という熱心な映画好きの方は読み飛ばして下さいね)

 TOHOシネマズ梅田には10のシアター(このシネコンでは他のTOHOシネマズが「スクリーン」と呼んでいるものを「シアター」と呼んでいる珍しいケース)があります。もともとここは4つの映画館でした。
 なかでもシアター9と10はいわゆる「別館」で、ナビオ阪急内に存在する「本館」については本来3つの映画館です。
 ナビオ阪急が1980年に建てられたときに現在の形になったその3つの劇場は、名前としてはそれ以前からあったようですが、ややこしいので、今回は1980年以降に絞っての話をすることにしましょう。

 3つの映画館というのは「北野劇場」「梅田スカラ座」「梅田劇場」という劇場名で、先の二つが洋画系、最後の一つが邦画系でした。
 最初の2つは8階にあり、入って奥の右側が北野劇場、左側がスカラと梅田劇場でした。

 だんだん話が見えてきた方もおられるかもしれません。
 そうです。90年代末から2000年代初頭に東宝系の劇場がシネコン化するときにこの3劇場を分割して(さらに窮屈な3つなシアターを追加して)今の8つのシアターにしたのです。
 「3つを8つに!?そんな無茶な」
 と思った方も多いでしょう。そうです。かなり無茶なことをやりました。(実際は3つを5つにして3つを追加)
 その結果が現在のいびつなシアターの形になっているのです。

 昔は大劇場には2階席というのがあったのですが、それを別のスクリーンを立てて別のシアターとしたのです。
 さらに2つの劇場は、劇場自体をまっぷたつにしました。
 その結果、以下のようになったのです。

 北野劇場(1階部分) → シアター1
 北野劇場(2階部分) → 消滅
 スカラ座(1階部分) → シアター2
 スカラ座(2階部分) → シアター4
 梅田劇場(1階部分) → シアター3
 梅田劇場(2階部分) → シアター5
 7階部分に新設    → シアター7、8
 9階部分に新設(シアター4、5に隣接) → シアター6

 そして現在、どういう状況になっているか、改めておさらいしておきましょう。

 シアター1 関西最大級の700席を越えるもっとも大きい北野劇場をほぼそのままに近い形で残しているため最も問題のないシアター。

 シアター2 スカラ座の1階部分をほぼそのまま残しているので、バランス的には特に問題のないシアター。

 シアター3 梅田劇場の1階部分をほぼそのまま残しているので、バランス的には特に問題のないシアター。

 シアター4 スカラ座2階部分を単独劇場にしたためかなり狭い上に、横がある程度の広さがあるのに縦が狭く、スクリーンの大きさに対して相当の圧迫感がある問題シアター。

 シアター5 梅田劇場2階部分を単独劇場にした。シアター4とほぼ同じ。

 シアター6 シアター4、5と同じ階に新規に作ったシアター。前後左右のバランスは悪くないが、シアターが極端に小さい。

 シアター7 7階に作ったシアター。かなり縦長になっており真ん中から後部座席からスクリーンまでがかなり遠い。

 シアター8 シアター7と同じ経緯で作られたシアターながら、個人的な感触としては7以上にスクリーンが遠く感じられる。

シアター9、10についても触れておきましょう。

 80年代までは現在は廃館となった「OS劇場」という国内に2館しかない70ミリシネラマ劇場がありました。それとは直接関係がないのですが、経営が同じだったのでしょう、離れた場所に「ニューOS劇場」という2スクリーンの劇場もありました。

 シネラマのOS劇場が廃館になったあと「ニューOS劇場」は「OS劇場」という名前に変更されました。
 その2階部分が、今のTOHOシネマズ梅田シアター9であり、3階部分がシアター10なのです。
 よって2シアターとも原型をとどめているため、やや小さめですが、比較的バランスの取れた劇場となっています。
 ただし、個人的にはシアター9の配席のバランスが若干不自然な印象があります。

 以上がTOHOシネマズ梅田の10スクリーンの誕生の背景です。

 「なんだよ、それじゃあ1〜3以外はほとんどダメダメじゃないか」

 と思われるかもしれません。

 確かにその通りなのですが、だからと言って全然ダメという訳もありません。
 問題のあるスクリーンは座席の位置を意識するだけでなんとかなる場合があります。
 それを以下にコメントしてみましょう。

 シアター1〜3 特に問題なし。

 シアター4、5 左右の端の方は避け、真ん中寄りを選ぶ。前後も後ろの席の方が圧迫感が少なくて良い。

 シアター6   バランスは悪くないが小さいので、前に行くほど左右よりも真ん中を選べば問題は少ない。

 シアター7、8 できるだけ前の方(の両端は避け真ん中寄り)を選ぶべき。3列目でも前すぎない。真ん中より後ろはかなり遠い。

 シアター9   大きな問題はないが、真ん中の通路を挟んで後ろ側の方がゆったりしている印象。

 シアター10  特に問題なし。

 これで、今まで判らなかった人も謎が解けてすっきりしてもらえることが出来ましたでしょうか。

 上記を参考に、何も考えずにフラッと行ったら火傷するかもしれないこの劇場で、ストレスなく安心して映画に集中できるといいですね。

 (2015年9月30日/2016年4月30日更新)

 【追記】文中に事実関係の誤りがあったため訂正しました。お詫び致します。
     梅田劇場は、スカラ座と同じ階にあり、現在のシアター3に相当。
     またシアター7、8は、98年に7階に新設されたもの。シアター6は2002年頃新設。
     (2016年4月30日)