あたまのなか研究室

ピクルス(2代目)とぶらいあん(初代)の研究室です。

「SNSと映画館」(10)梅田ガーデンシネマとSNS

 いよいよ今月末で閉館する梅田ガーデンシネマ。
 この映画館の良かったところを考えてみたいと思います。

 施設が綺麗であるとか待ち合いがゆったりしているとか長年親しまれてきたとか、いろいろありますが、本質的には、
 「ヨーロッパや知られざる国や地域の、質の高い作品を常に上映し続けてきた」
 ことに尽きると思います。

 いや、本当にこれだけです。これだけで16年間観客を力強く引っぱってきたのです。
 他の資本系ミニシアターのように若者向けライトエンタメ作品はほとんどありません。
 「媚を売らない」
 これが、ガーデンシネマの矜持ではなかったか、と思います。

 そしてその結果が裏目に出てしまいました。
 観客の高齢化です。
 エンタメ志向の若者を取り込むことができず、観客の多くはシニアとなっていきました。
 そして近年の「若者の洋画離れ」が拍車をかけた。
 おそらく、背景としてはそんなところだろうと想像します。

 しかし個人的には、そんなガーデンシネマが好きでした。
 「若者に媚びない大人の映画館」そんな感じでした。
 しかしながら、それは同時に頑さでもありました。

 この映画館は、資本系ミニシアターにしては珍しいことに、クレジットカードが使用できませんでした。
 カウンターにパソコンはありませんでした。
 指定席でなくずっと整理券自由席制でした。
 チケットはプリントアウトではなく、印刷物に整理券番号をホチキス止めでした。
 つまり、昔ながらのアナログスタイルです。

 施設が新しいので一見気づきにくいのですが、要するに「器は新しいが、中身は古かった」のです。
 非難しているのではありません。私自身はそういうところもとても好きでした。

 でも、それが時代にそぐわなくなった(のかどうか本当のところは判りませんが)としたら、それは非常に残念なことです。
 実は、梅田ガーデンシネマは、最後までSNSを使わなかった映画館です。TwitterFacebookもアカウントはありません。(これは、これほどの認知度の高い映画館では他には例のないことなのかもしれません)

 「だから、潰れたのだ」などと言うつもりはまったくありません。
 昔ながらの頑さが時代に合わなくなったのだとしても、「Twitterをやっておけばよかった」とか「もっと若者向けの映画を上映すれば良かった」とか、そんな声に流されていったら、もうそれは別の映画館です。エンタメ路線の多いシネ・リーブル梅田です。
 ゆえにシネ・リーブル梅田になるのだ、と言われたら、あるいはそうなのかもしれません。

 でも、屋号が変わろうが、今までのガーデンシネマのように、大人向けのラインナップを、今後もシアター3、4で上映し続けていくのであれば、それは、もう名前なんてどうでもいい話です。今まで通り、大好きな映画館として通い続けるだけです。

 何だかガーデンシネマ追悼みたいな文章になってしまいました。

 閉館の本当の原因は私には判りません。しかし大事なのは閉館の理由を探ることよりも、これからどうなるかを観客として見守っていくということではないか、そんな風に思っています。

 今日は「SNSを使わない映画館」の話でありました。


 (2014年2月13日)