あたまのなか研究室

ピクルス(2代目)とぶらいあん(初代)の研究室です。

映画女優としての森光子

 またまた訃報の話で困ってしまうのですが、森光子さんが10日に心不全で亡くなられたとの今夜のニュース。
 自分は今年になって「原節子と同じ92歳でお元気でいてほしい」というようなツイートをしていたこともあり、とても残念に思います。

 しかし気になったのは、大量のツイートや速報が乱れ飛ぶ中、果たして、森光子を舞台女優として『放浪記』以外で語っている人がどれだけいたのか、またTV女優として『時間ですよ』以外で彼女を語っている人がどれだけいたのか、と思います。どうやらあまりおられないようなのは残念です。

 おそらく今後、色んな方が彼女についての文章を発表していくのでしょうが、彼女の女優業としての回顧よりも彼女自身のパーソナリティの側面についての懐古の方が圧倒的に多いのでは、という気がします。だとすれば「人として多くの方々に惜しまれても、女優として積極的に評価されることが少ないこと」を、彼女自身としてはどう思うのか、ちょっと考えてしまいます。

 映画女優としては(今年観たばかりなのですが)『台所太平記』のように、軽い脇役が多く出演作も少なかったようで、乙羽信子のコメディエンヌ的部分と重なって(覆いかくれて)しまったのが、彼女の不幸ではなかったのか、と思ったりもします。
 そういう意味で、今さらながら映画女優としての乙羽信子の偉大さ(特に、三枚目も二枚目もこなせる芸域の広さ)が際立ってしまうように感じました。

 森光子という女優は、基本的には舞台では当たり役を美しきマンネリズムにまで高め、TVドラマでは「おかしみのあるオバさん役」として職人芸として高めた人ではなかったのか、と思います。

 詳しくもないのに何だかエラそうですみません。森光子さんのご冥福をお祈り致します。

 (2012年11月14日)