あたまのなか研究室

ピクルス(2代目)とぶらいあん(初代)の研究室です。

『OPUS』における「タツローくん」の研究(本篇)

 前回も書きましたが、『OPUS 〜ALL TIME BEST 1975-2012〜』は、山下達郎ファン、そして、とり・みきファンにとっては盆と正月がいっぺんに来たような大騒ぎなのであります。そうなのです。

 したがって今回も、『OPUS』のブックレットを読んだ方のみのためだけにこの記事をお送り致します。
 (読んでいない方にはこれはいったい何のこっちゃいさっぱりわからんがなという絶望の境地に至りますので前回のにも増して一層のご注意を)

 さて、今回は『OPUS』における「タツローくん」を研究、というほどでもないですがちょっだけ考察してみました。
 タイトルは前回の命名に準拠。配色とタツローくんの向きが気になったのでそのデータも(甚だ主観的ですが)記載しました。

1)「ギターを持ったタツローくん」表紙(1P)
  背景色青緑/メインカラー青/正面向き/顔も正面/目線は右
  ◎本アルバムジャケットのイメージイラスト。エレキギターを弾いているが、鼻と口がなく歌っているのかどうかはわからない。そもそもタツローくんにはすべて鼻と口がない。作者は決して「歌っている口を書けない」訳ではない。それは観ているものの想像に委ねているのである。

2)「うつむき加減に歩くタツローくん」目次(2P)
  背景色青緑/メインカラー赤、次いで濃いめの青緑/左向き/顔は正面/目線はやや下
  ◎考え事をしながら歩いているようにみえるタツローくん。トレードマークのニット帽を被っている。

3)「赤いオープンカーに乗ったタツローくん」『DOWN TOWN』(4P) 
  背景色オレンジがかった赤/メインカラー赤/左向き/顔は正面/目線は前
  ◎ドライブを楽しんでいるのか、単に仕事に向かうだけなのか、明確には読み取れないが、やや脱力気味な表情から仕事疲れの気分転換のドライブと推察。

4)「飛行機に乗ったタツローくん」『LOVE SPACE』(7P)
  背景色白/メインカラー青緑、次いで赤/斜め左/顔は上向き/目線は前
  ◎曲のテーマから宇宙艇の可能性もある。運転席がオープンなので飛行機としたが、遊園地の宇宙艇の可能性も捨てきれない。ジェットエンジンから噴射しているようにも星が瞬いているようにもみえる。

5)「ターンテーブルの前に立つタツローくん」『SOLID SLIDER』(8P)
  背景色オレンジがかった赤/メインカラー赤、次いでグレー/正面向き/顔も正面/目線は左
  ◎曲からいってターンテーブルにほぼ間違いないが、積み上げた荷物の前に立っているだけ、という作者得意のフェイクの可能性も。これが空港ならば、警戒する目つきから入国手続きにはリスキーな何かが入っていたりするのかも。

6)「マラカスふりふりタツローくん」『LET'S DANCE BABY』(10P)
  背景色白/メインカラー赤、次いで黄色/正面向き/顔やや左向き/目線は前
  ◎もっともファンキーなタツローくん。衣装はキング・トーンズからレンタルの可能性が高いと思われる。

7)「思い入れのある曲を歌い終えた瞬間のタツローくん」『潮騒』(12P)
  背景色オレンジがかった赤/メインカラー茶色/後ろ向き/顔は下向き/目線は不明
  ◎右手のマイク(まさか、ちょんまげでは・・)がなかったら、何かショックなことがあったのか、と思わせるタツローくん。

8)「CMに出ているタツローくん」『RIDE ON TIME』(15P)
  背景色クリーム色/メインカラー薄茶色&黒&青/正面向き/顔も正面/目線は前
  ◎マクセルのCMに出ていたときのタツローくんに違いない。でも映像で確認した訳ではありません。単にアルバムジャケットであるとか言わないで。

9)「カッティングをキメているタツローくん」『SPARKLE』(16P)
  背景色オレンジがかった赤/メインカラー茶色/正面向き/ジャンプでやや左に揺れた顔/目線は右
  ◎演奏中、唯一地に足のついていないタツローくん。なぜ空軍戦闘服なのか。七つの海を高くて届かぬ愛に向かって飛行機で飛んでいるという解釈とすれば軍服であるのは作者のミリタリー趣味か。それとも「飛行機に乗ったタツローくん」の想像延長線なのか。

10)「フランス留学中のタツローくん」『YOUR EYES』(19P)
  背景色クリーム色/メインカラー白と青のストライプ/右向き/顔は左/目線は前
  ◎曲との関連性が希薄になってきた。あえていえば英語詩なので「外国」のイメージからか。あえて英語圏にしないのがヒネリ好きな作者らしい。

11)「海水浴のタツローくん」『悲しみのJODY』(21P)
  背景色白/メインカラー茶色、次いでピンク&青/正面向き/顔も正面/目線は前
  ◎日焼け真っ黒少年三部作の第1弾。正面をみて呆然としている構図は少年期に多い。

12)「サンタクロースのタツローくん」『クリスマス・イブ』(22P)
  背景色白/メインカラー赤、次いで白/正面向き/顔は左/目線は前
  ◎普段スマートなタツローくんだが、この曲での役作りのために体重を増やし身長も少し落としたようだ。

13)「サーファーのタツローくん」『THE THEMA FROM THE BIG WAVE』(24P)
  背景色黄緑/メインカラー茶色、次いで薄い青/正面向き/顔はやや左/目線は前
  ◎日焼け真っ黒少年三部作の第2弾。スポーツをしている唯一のタツローくん。ブライアン・ウィルソンのごとくタツローくんはスポーツ苦手少年と思われるが、ブルースブラザースが出てきて無理矢理サーフィンさせられたのかもしれない。

14)「拡声器を持ったタツローくん」『土曜日の恋人』(26P)
  背景色白/メインカラーグレー&黒&青/正面向き/顔は右/目線は前
  ◎これがあの有名なライブにおけるスピーカーの光景なのか。ライブ未体験なので確信できないのが無念極まりない。

15)「リハーサルで歌うタツローくん」『蒼氓』(29P)
  背景色白/メインカラー青/正面向き/顔はやや右/目線はやや右
  ◎これは本番の可能性もかなりあるが、軽く歌っている感じからリハーサルと読んだ。マイクスタンドの形が奇妙(これがマイクスタンドであるならば)だがマイクスタンドじゃないのかもしれない。
 ※どうやらミニタンバリンのようである。(9月29日追記)

16)「虫取りに行くタツローくん」『さよなら夏の日』(31P)
  背景色クリーム色/メインカラー茶色/次いで白/正面向き/顔も正面/目線は前
  ◎日焼け真っ黒少年三部作の完結篇。虫取り網を持って呆然としているが、虫をどこに取りにいったらわからなくてなのか、全然取れなかったからなのか、前後がわからない。単に虫取り網を持っているだけなのかもしれない。

17)「レコードを聴くタツローくん」『ターナーの汽罐車』(32P)
  背景色黄緑/メインカラーグレー/正面向き/顔も正面/目線は前(宙を舞っている可能性大)
  ◎おそらく自宅でレコードを聴いていると思われる。深夜なのでヘッドフォンをしているのだろう。ただしこの座り方、リラックスと緊張感が微妙に入り交じった感じは、ひょっとしたら親しい友人の家なのかもしれない。

18)「走るタツローくん」『ジャングル・スウィング』(35P)
  背景色クリーム色/メインカラー青/右向き/顔は正面/目線は前
  ◎なぜ走ってるのか、どこを走っているかはわからない。可能性としては「ライブに遅刻しそう」「舞台裏を急いで移動している」「ステージを走っている(マイクは移動先にある)」。大穴としては「娘の卒業式に向かっている」。

19)「アコースティックで弾き語るタツローくん」『ヘロン』(36P)
  背景色オレンジ/メインカラー赤&茶色/正面向き/顔も正面/目は閉じている
  ◎アコースティックギターでしっとりと弾き語りをするタツローくん(久しぶりに音楽に戻ってきた!)。曲は『シャンプー』あたりか。とても『ヘロン』という感じではない(アコースティックバージョンがあったらすみません)。

20)「ワインを片手にタツローくん」『世界の果てまで』(38P)
  背景色白/メインカラーオレンジ/正面向き/顔はやや右/目線は前
  ◎家で奥様の料理を待つ間のちょっとした時間、もしくは何かのパーティで一瞬ひとりになった時間か、と推察。

21)「料理長タツローくん」『ドーナツ・ソング』(40P)
  背景色オレンジ/メインカラー白、次いで赤/正面向き/顔はやや左/目線は右
  ◎フライパンを力なく持って誰かを見ているタツローくん。一体誰を見ているのか、目線は冷ややか。誰だよこんなカッコさせたの。

22)「もともとドラマーなんだよタツローくん」『君の声に恋してる』(43P)
  背景色クリーム色/メインカラー赤&青/正面向き/顔も正面/目線はやや右
  ◎さあこれからドラムを叩くぞお・・ってどうやるんだっけ。久しぶりだからなあ。・・これ、撮るの?

23)「雨に濡れる幼児タツローくん」『2000トンの雨』(44P)
  背景色オレンジ色/メインカラー黄色/正面向き/顔は左/目線は前
  ◎傘を持っているが上の空、合羽も着ているがかなりびしょぬれ。視線の先は合羽を着さされ傘を持たされ慌ただしく去って行った母親に送っているのか。それとも何かものすごい場面を目撃してしまったのか。雨でスリップした車が水力タンクに激突して水が盛大に吹き出している・・のがこの曲をつくるきっかけになったとか。

24)「オルガンを弾くタツローくん」『FOREVER MINE』(46P)
  背景色白/メインカラー青&薄い黄色/右向き/顔はやや下向き/目線はやや下
  ◎実は若い頃保育園で歌の伴奏のお手伝いをしたことがある、とか。

25)「冬の日、ハープを吹くタツローくん」『ずっと一緒さ』(48P)
  背景色オレンジ/メインカラー茶色/正面やや左向き/顔は正面/目は閉じている
  ◎ちょっと昔を思い出しながらブルースハープを吹いてみたタツローくん。

26)「ダッフルコートのタツローくん」『愛しているって言えなくたって』(51P)
  背景色クリーム色/メインカラー青/正面向き/顔も正面/目線はやや右
  ◎冬、考え事をしながら佇むタツローくん。たぶん誰かを待っているのだろう。きっと君は来ないのかもしれない。

27)「合図を送るタツローくん」『希望という名の光』(53P)
  背景色白/メインカラー赤、次いで緑&青/左向き/顔はやや上向き/目線は正面
  ◎リハーサル終了のサイン「OK!」を出すタツローくん。もしかすると指につばをつけて風向きを読んでいるだけなのかもしれないが。

28)「マンホールから顔を出すタツローくん」カタログページ(56P)
  背景色クリーム色/メインカラー黄緑色&薄い茶色/少し右向き/顔はやや左/目線は右
  ◎下水道を逃走中、上界の様子を探るタツローくん。〆切に追われたのか。発売延期寸前「ウーフー!!」と叫んで彼は逃げた。

29)「後ろ姿のタツローくん」謝辞(58P)
  背景色青緑/メインカラー紫色/背面向き/顔は正面/目線は不明
  ◎ステージの緞帳(ってまだありますか?)が開くのを待っているタツローくん。今日も3時間オーバーで行くか。肩の力を抜く一瞬。

30)「ギターを持ったタツローくん:リプライズ」裏表紙(60P)
  背景色青緑/メインカラー小豆色/正面向き/顔は不明/目線も不明
  ◎エレキギターを持ったタツローくんの下半身をフィーチャー。ゆっくりと上に上がって(宙に浮いていき消える)フェイドアウト。静かにエンディング。


 ここからは上記データをもとに分析篇。データの集計分類はこちら(↓)を参照のこと。
 http://d.hatena.ne.jp/communicationbrakedown/20120928/1348839677

 <様態分類>

 音楽(お仕事としての)         9
 イメージショット(あるいは妄想)    9
 プライベート              5
 音楽(たぶんお仕事というよりは趣味で) 3
 幼少時代                3
 不明                  1

 何をしているときのキャラクターかの分類であるが、音楽に関することが多いのは当然として、作者いわく「コスプレ」と語る、現実にはほとんどありえないキャラクターの様態がかなり多いのが特徴である。しかしながら音楽にも何も関係がない完璧なコスプレとしては「サンタクロース」と「料理長」ぐらいではないか、とは思う。

 <配色分析(背景色)>

 白         9
 クリーム色     7
 青緑        4
 オレンジがかった赤 4
 オレンジ      4
 黄緑        2

 白およびそれに近いクリーム色が圧倒的に多いのは歌詞をみやすくするため全体の半分以上がこの2色になっているため、また、次いでオレンジ系、薄い緑系が多いのは、見やすい歌詞の文字に使用されている色を反転的に身開き隣接ページに使用している場合が多いためである。従ってこれらはイラスト作成上の要請ではなく、逆にこれにあわせたイラストの配色が求められていることになると考えられる。(ブックレット全体の配色は、アート・ディレクター&デザイナーが担当しているはずである)

 <配色分析(メインカラー)>

 青    9
 赤    7
 茶    7
 青緑   2
 薄茶   2
 黒    2
 黄緑   2
 白    2
 グレー  1
 オレンジ 1
 黄    1
 薄黄   1
 紫    1
 小豆   1

 最初にお断りしておくが、何をメインカラーとするかについてはかなり主観的に判断せざるを得なかった場合が多かった。ここは独断であることをご了承願いたい。またメインカラーを複数色としている場合も多々あるので合計は30を大きく越えている。

 アルバムジャケットのメインカラーが青であるため、このアルバムのイメージカラーは青である。従ってイラストのメインカラーが青なのは当然であるが、次いで赤と茶が多いのは予想外であった。茶色は「日焼け真っ黒少年三部作」の力が大きいと思われるが、赤で思いつくのはサンタクロースくらいしかない。あとの色は1、2回という少数の登場であった。基本的にあまり同じ色を使わず配色のバラエティを出そうとしている作者の意図が感じられる。(いやそれにしても赤と茶は・・)

 <方向分析>

 ◉身体の向き
  正面   19
  左     5
  右     4
  背面    2
 ◉顔の向き
  正面   13
  左     9
  右     3
  上     2
  下     2
  不明    1
 ◉目線
  前    16
  右     7
  左     1
  下     1
  なし、不明 5

 各キャラクターがどちらの方向を向いてどこを見ているか、に特徴があると感じられたため、「身体の向き」「顔の向き」「目線」について調べてみることにした。なお「向き」は観察者から見た方向、「顔の向き」「目線」は、絶対的位置ではなく相対的位置で、「顔は身体の位置に対しての向き」、「目線は顔の位置に対しての向き」を指している。つまり左向きのスポーツカーに乗っている場合、身体も顔も目線も左であるが、ここでは「身体は左、顔は正面、目線は前」ということになる。

 身体の向きについては圧倒的に正面が多い。これはキャラクターをわかりやく見せるための当然の意識である。印象としては左向きのイラストが多いと思われたが、これは2、3、4番目に登場するキャラクターが左を向いていたためで、トータルとしては左右に大きな違いはない。

 顔の向きについても正面が多いのは身体の向きと同じ理由である(ただし割合は落ちて半分以下である)。ここで特筆すべきは顔が右を向いているより左を向いている方が3倍も多いということであろう。やはり作者には「左向き」のクセがあった、と考えられる。

 最後に目線であるが、これも半分以上が前(正面)を向いている。ここでは顔の向き以上に特徴があり、左右差は圧倒的に右側の方が多い。顔が左を向きがちである反動で目線は右向きになりがち(顔を向こうに向けながら視線をこちら側に向けるという「こっそり観察」態は「料理長タツローくん」が典型的)ではあるというものの、左がほとんどないというのはかなり極端な傾向だと思われる。

 ここから考察すると、作者にとって「左」と「右」には「方向」以上の意味があると思われる。それは「左=これから向かっていく方向=未来(の暗示)」そして「右=今まで来た方向=過去(の暗示)」である。キャラクターが右側から左に目線を向けることが多いのは、「未来に向かう過程において、過去の出来事に思いをはせている」からである。さらに言えば「あまりみたくない過去のイヤな事象に目を向けて、できればこれらのことを忘れさってしまいたい」という心理が推察される。これが作者自身の心理なのか、または作者が「タツローくん」に込めた心理なのか、あるいはその両者なのか、それは読者の判断におまかせすることとしたい。

 <まとめ>

 キャラクターにおける「様態」「配色」「方向」について、分類・考察してみたが、特に「方向」について顕著な傾向を発見することができた。考察についてはまだまだ検討の余地を残してはいるものの、今後の「タツローくん」研究の大いなる成果に向けてのささやかな一歩を踏み出すことができたと自負している。これにより全国の「タツローくん」研究者の更なる発展の一助になれば幸いである。

 <初回限定ボーナストラック:帽子率>

 帽子    13
 帽子の代用  2
 なし    14
 描写なし   1

 この項目を立てた理由についてはあえて言及しないが、帽子または帽子の代用(メガネ、ヘッドフォン)が帽子をかぶっていない場合と比率が拮抗している。詳しくはデータ篇を参照して頂きたい。ニット帽を除くと各種1回ずつの様々な帽子をかぶっているのが特徴である。


 (2012年9月28日)



OPUS 〜ALL TIME BEST 1975-2012〜(初回限定盤)
OPUS 〜ALL TIME BEST 1975-2012〜(通常盤/初回プレス)