あたまのなか研究室

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第9回大阪アジアン映画祭私的総括

 <第9回大阪アジアン映画祭・各賞受賞結果> 2014年3月16日発表

 ★観客賞 『KANO』 台湾/監督:マー・ジーシアン馬志翔) ★Audience Award “KANO” Taiwan / Director: Umin Boya

 ★ABC 賞 『おばあちゃんの夢中恋人』(阿嬤的夢中情人) 台湾/監督:北村豊晴、シャオ・リーショウ(蕭力修) ★ABC Award “Forever Love” Taiwan / Director: KITAMURA Toyoharu, SHIAO Li-shiou

 ★最優秀女優賞 カリーナ・ラウ(劉嘉玲) 香港/『越境』(過界)主演 ★Best Actress Award Carina LAU Hong Kong / “Bends”Leading Actress

 ★スペシャル・メンション 『アニタのラスト・チャチャ』 フィリピン/監督:シーグリッド・アーンドレア P・ベルナード ★Special Mention “Anita's Last Cha-Cha” The Philippines

 ★来るべき才能賞 ハ・ジョンウ 韓国/『ローラーコースター』監督 ★Most Promising Talent Award HA Jung-woo Korea / “Fasten Your Seatbelt”Director

 ★グランプリ(最優秀作品賞) 『シフト』 フィリピン/監督:シージ・レデスマ ★Grand Prix (Best Picture Award)  “Shift” The Philippines / Director: Siege LEDESMA


 <各受賞についての私的所感> (※受賞作における未見作品は『KANO』『越境』)

 グランプリが『シフト』というのは意外でした。私は初日に観て、(ややひいき目なCO2作品を除くと)今年唯一「素晴らしい」で投票しており、優れた作品であることは間違いないのですが、例年ならばグランプリを取れる作品としては少し物足りないと感じます。監督の映像・音楽センスは見事なものです(今回この作品のみ2回観ました)が、巧くまとまりすぎなところと、独創的という意味での物足りなさ。今回自分が観た中では最上の部類に入る作品ですが、2日目以降、または自分が観ることができなったものに更に突き抜けた作品があるのでは・・という期待がかなわなかったのはちょっと残念です。

 観客賞が『KANO』というのも意外でした。作品云々のことではなく、オープニングという「映画祭の顔」(つまり多く告知されて観客も多い)が「観客賞の対象」になっていた、ということにです。恐らく以前にもあったのでしょうが、「ベテランから巨匠枠」は別格なので、対象に入れなくてもいいような気がします。観客賞なので自分が決めるのもヘンですが、『狂舞派』か『おばあちゃんの夢中恋人』が相当のような気がします。どちらか一方を観客賞、もう一方をABC賞でもいいと思うのですが、『狂舞派』はやはりスクリーンで観たい作品なので、テレビ放映を前提としたABC賞としては『おばあちゃんの夢中恋人』が順当だったのでしょう。(『狂舞派』がどの賞にも入っていないのは「特別企画」枠で対象外だからでしょうか。『KANO』はオープニングであると同時に「特別企画」枠でもあるんですが)

 『アニタのラスト・チャチャ』も優れた作品だったので何らかの賞をということでスペシャルメンションというのは妥当でしょう。個人的には、今年に関してならばという条件つきでグランプリでもいいと思っているくらいで、もし強力な『おばあちゃんの〜』がなければ、ABC賞向きでもあったと思います。

 上記以外で印象に残った作品を以下に記します。

 『2014』   インドネシアの社会派ドラマとして良い作品だが、アクションなど娯楽色のアンバランスが惜しいところ。
 『ある複雑なお話』三者の視点で描かれた「代理出産」をテーマにした良作。
 『甘い殺意』   純粋な娯楽作品としては今年最も優れている。
 『失魂』     終始緊張感の張りつめたホラーサスペンス。
 『春夢』     結婚後の女性の性について写実的に描いた力作。
 『アイス』    ミャンマーの仕事のない田舎で暮らす貧しい男女の姿をドキュメンタリータッチで描いた秀作。


 <CO2を中心とした日本映画についての所感> (※未見作は『映画列車』『つぐない』)

 今年のCO2助成作品『僕はもうすぐ十一歳になる』『螺旋銀河』はどちらも良作。去年がいまひとつの内容だったので、『友達』などを含め、今回は豊作だったと思います。
 今年で10回目のCO2、今後どういう展開になるのか判りませんが、今年のような作品を輩出していって頂けると嬉しいですね。


 <私的全体総括>

 今年は初日に『シフト』が出て、更にこれ以上のものが出るかと思っていたら結局は決定打が出なかった印象。しかし飛び抜けた作品がなかったものの、全体のレベルは高く優劣が拮抗する作品が多かったと思います。
 でも、わがままを言わしてもらえるなら、多少当たり外れがあっても「これぞ!」というような(去年で言えば、オープニング『毒戦』&クロージング『二重露光』を除いたとしても、『GF*BF』のような)突き抜けた作品が欲しかったな、と思います。
 まあでも年により傾向の違いはあるので、また来年に期待したいと思います。
 (ありますよね?もし場所が変わるとしても・・)

 あ。今年は国の偏りが激しかったですね。フィリピンと台湾(特集があったにしても)がやたら多かった印象。反対に例年に比べると、韓国、中国が少なかったような気がします。単に「製作国では選ばない」のに観てみた映画がたまたまそういう傾向を強めただけなのかもしれませんが・・。

 来年の第10回大阪アジアン映画祭も楽しみにしています。(3年前からの参加なのに、来年参加すれば参加率50%になるんですね)

 (2014年3月16日)