あたまのなか研究室

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クロード・ランズマン「ホロコースト3部作」を観て

 クロード・ランズマン監督作のホロコースト3部作を観た感想についてツイートしたもののまとめです。

 『SHOAH ショア』(1985年、567分)
 『ソビブル、1943年10月14日午後4時』(2001年、102分)
 『不正義の果て』(2013年、216分)

 基本的には12年間かけて製作、そのうち5年間は編集にあてたとあり、恐らくそれ以前から企画は進行していたと思いますが、インタビュー撮影は75年〜80年頃にかけて行われたのでは、と推測されます。

 以下、ツイートをそのまま再掲載しています。


 #クロード・ランズマンSHOAH ショア』(シネ・ヌーヴォホロコースト関係者の証言のみで構成されたドキュメンタリー。語っている最中に現場の景色を映すなど単調にならないよう配慮されているので、音楽がなくとも9時間半は思ったほど長く感じられない。#eiga #映画 #ミニシアター

 #クロード・ランズマンSHOAH ショア』(シネ・ヌーヴォユダヤ人の視点:ドイツのユダヤ人だけでなく絶滅収容所のあるポーランド含む各国のユダヤ人までが対象だったと知り愕然。よく考えれば侵攻した国では同国同様の扱いだと推測してしかるべきだった。#eiga #映画 #ミニシアター

 #クロード・ランズマンSHOAH ショア』(シネ・ヌーヴォ絶滅収容所:一般に「強制収容所」と言われるのは「強制労働収容所」であり、ユダヤ人は殺されるのが前提の「絶滅収容所」。体力ある人は選別されユダヤ人管理係にされたが彼らも最後に殺害が前提。#eiga #映画 #ミニシアター

 #クロード・ランズマンSHOAH ショア』(シネ・ヌーヴォユダヤ人評議会:ドイツのユダヤ人の扱いについてはドイツ人がユダヤ人評議会を通じて行っていた。評議会はナチスに加担したがユダヤ人を守る側面もあった。この両義性は侵略には普遍的にみられる。#eiga #映画 #ミニシアター

 #クロード・ランズマンSHOAH ショア』(シネ・ヌーヴォ)ゲットーの現実:絶滅収容所よりマシと思っていたユダヤ人ゲットーも、実際は道端に餓死者がごろごろ横たわる凄惨な状況。これが絶滅収容所への移送に発展する言わば「プレ・ホロコースト」だった。#eiga #映画 #ミニシアター

 #クロード・ランズマンSHOAH ショア』(シネ・ヌーヴォ)収容所の抵抗者たち:絶滅収容所ユダヤ人の中には抵抗を試みる人々もいた。秘密裏に蜂起計画を立てたものの、首謀者は生き残る意味を重視し脱走に成功。全体で蜂起に成功したのは1度だけだった。#eiga #映画 #ミニシアター

 #クロード・ランズマンSHOAH ショア』(シネ・ヌーヴォナチスの視点:元SS幹部や収容所責任者の証言。賛否ある隠し撮り画像は画面の粗さが逆に不気味な印象を与えている。撮影許可を受けての証言者は「自分は小物」で加害意識は薄く「悪の凡庸さ」が。#eiga #映画 #ミニシアター

 #クロード・ランズマンSHOAH ショア』(シネ・ヌーヴォ)一般市民の視点:絶滅収容所はドイツ領ポーランド各地の個人牧場に隣接していたという事実。彼らはおおよそのことは、見たり聞いたりして知っていた。このことは一体どういう意味を持つのだろうか。#eiga #映画 #ミニシアター

 #クロード・ランズマンSHOAH ショア』(シネ・ヌーヴォ)一般市民の視点:一般市民もナチスの依頼を受けていた。例えば理髪店主が収容所に呼ばれて狭い部屋でユダヤ人の髪を切る仕事を受けていた。これをナチスへの加担とみるか、強制の被害者とみるか。 #eiga #映画 #ミニシアター

 #クロード・ランズマンSHOAH ショア』(シネ・ヌーヴォユダヤ人への視線:一般市民に話を聞くと、当時のユダヤ人は金持ち、かわいい女性が多く、ポーランド女性には良い印象はなく「(ユダヤ人がいない)今の方がいい」と語る。薄く広く差別は拡がる。 #eiga #映画 #ミニシアター

 #クロード・ランズマンSHOAH ショア』(シネ・ヌーヴォナチスの大発明:ユダヤ人学者によると、ナチスが行ってきたことは皆、それ以前の歴史上あったこと(ユダヤ人迫害など)で独創性は全くないと語る。唯一の大発明が「ホロコースト」だったのだと。 #eiga #映画 #ミニシアター

 #クロード・ランズマンSHOAH ショア』の持つ意味:これは「ホロコースト関係者へのインタビュー体験」を観ている者に最大限体感させることで「証言内容」以上の「何か」を私たちに植えつける。テクストのみでは読み切れない感覚を読み取ることができる。 #eiga #映画 #ミニシアター

 #クロード・ランズマンSHOAH ショア』私たちが観る意味、理解の向こう側:観終えて、何日かかけてこの映画を自分に取り込むことができたあと、私たちは「自分が関係者の立場だったら?」という問いに迫られる。被害側、そして加害側。後者が最大の難題。 #eiga #映画 #ミニシアター

 #クロード・ランズマン『ソビブル、1943年10月14日午後4時』(シネ・ヌーヴォ)『ショア』のインタビュー素材から「ソビブル収容所の蜂起」を証言で構成した第2弾。「黙って死ぬより戦って死ぬ」。追い込まれた人間が最後に見せる力は経験しない者の想像を遥かに越える。#eiga #映画

 #クロード・ランズマン『ソビブル、1943年10月14日午後4時』で印象的なのが「ナチスが収容所で大量にガチョウを育てていた」こと。理由は悪い冗談のようで、その証言のとき画面はぐるぐる回るガチョウたちの映像。笑いが反転して悪夢になる不快さ。ヌーヴォでの上映は5日20:40で終了。

 #クロード・ランズマン『ソビブル』絶滅収容所に送られた人数を「日毎、場所毎に」英語で表示しながら、ランズマンがフランス語で延々と読み上げるラストが圧巻。凡庸な映画の編集なら一覧をざっと流して合計人数を述べるだけだが、この「反効率」が「犠牲者の個」に近づけ、事の残酷さを体感させる。

 #クロード・ランズマン『不正義の果て』(シネ・ヌーヴォ)「模範収容所」の管理者であったユダヤ長老評議会の生き残ったラビであるムルメルシュタインに行った75年のインタビューで構成された第3弾。アイヒマンがどういう人物であったかが語られる貴重な証言。#eiga #映画 #ミニシアター

 #クロード・ランズマン『不正義の果て』ランズマンがこの証言を発表することをずっと躊躇っていたのは「ナチスの加担者かユダヤ人を守った人か」というムルメルシュタインの評価が下しきれないことにあった。しかしランズマンの思いはラストシーンに現れている。75年の映像でも現在の編集によって。

 #クロード・ランズマン『不正義の果て』本作は感触が違い、13年現在の映像に晴れが多く前作までの曇天の重苦しさがない。ムルメルシュタインとの対話で落ち着かないのかやたらタバコを吸っており本人が出ないのに画面が煙だらけだったり。あと当時50歳頃の色男と88歳現在の落差に時の流れを。

 (2015年2月28日〜3月6日、Twitterにて初出)