あたまのなか研究室

ピクルス(2代目)とぶらいあん(初代)の研究室です。

大阪ヨーロッパ映画祭の終焉

 映画祭がある場合は告知がありますが、映画祭がない場合は「何もない」ままフェイドアウトして終る可能性が高いので、今回がこの映画祭に関する最後の報道になるかもしれません。そこでこの機会に、大阪ヨーロッパ映画祭について少し書いておきたいと思います。

 「「大阪ヨーロッパ映画祭:秀作発掘20年 今年の開催ピンチ」(2014年4月19日、毎日新聞
 http://sp.mainichi.jp/enta/news/20140419k0000e040224000c.html

 今回表面上はお金の問題のように見えますが、そうではありません。
 市の助成金は700万円。これは大阪アジアン映画祭の1/4です。仮に公募型助成金を申請したとして、今までの実績から最大400万円の助成金を得る事は現実的に充分あり得るだろうと思います。すると不足分は300万円となります。
 この額は微妙です。映画好きの篤志家が3人くらい、あるいは1人でも集めることができる額であると思いますし、個人からの小額資金を募るということも不可能ではないと思います。

 だから資金不足が問題なのではありません。これは創設者のパトリス・ポワトー氏の後継者がいない、ということが最も大きな問題なのです。

 今までポワトー氏に対する負荷があまりにも大きすぎたのではと推測します。主催という立場は、単に旗ふりだけでなく、映画の選定、ヨーロッパ配給との調整、ゲストの調整、そして資金の工面など、長年に渡って映画祭の最も重要となる部分の作業を行ってこられたと思います。特に、新作映画の選定とヨーロッパ側とのパイプという役割は、他の人間には代え難い役目であったことが推測できます。
 それに加えて普段の本業もあります。それらの激務も、最初はそれでも気力だけでやっていけたのでしょうが、さすがに20年もやっていると、時間的・身体的・経済的にも限界が来たということでしょう。

 よって昨秋の「第20回」は、ポワトー版大阪ヨーロッパ映画祭としては最後の開催となりました。
 本来、映画祭自体が最後になるのであれば、「最後の映画祭」として大々的に宣伝すれば観客も増え収益も増え(というより赤字が減り)気持ちよく有終の美を飾ることができたはずです。
 しかしながらポワトー氏が主催者でなくなる(名誉委員長という肩書きと多少の協力関係としては残るようですが)だけで、映画祭事務局としては映画祭をやめるつもりはない。しかしポワトー氏に代わる人材もいない。だから現実的に映画祭の開催は困難になる。そういうことだろうと思います。

 今後ポワトー氏のように、ヨーロッパの映画事情に精通していて、太いパイプもあり、皆を引っぱっていくカリスマ性がある人物が現れる可能性は、不足資金を補ってくれるスポンサーが見つかる可能性に比べると、著しく低い、と言わざるを得ません。
 しかしながら、これらのうちの1つでも秀でた「モチベーションが非常に高い」人物が登場する確率はそこまで低くはないのではないかと思います。不足するものを熱意で補うことができるような人物であれば、存続の可能性はまだ残されていると言えるでしょう。

 もっとも、そうであったとしても、昨年までのような規模での開催や質の高さを維持することは難しいだろうと思います。「大阪ヨーロッパ映画祭」という冠自体、外すことになるのかもしれません。
 それでも、劇場公開されない良質なヨーロッパ映画を上映する場を続けて貰えるのであれば、どんな形であっても、関西の映画ファンとしては非常に嬉しいことだと思います。

 大変であるとは思いますが、関係者の方の今後の奮起に期待しています。
 そしてもし映画祭が復活するならば、微力ながら、ひとりの観客としてできることを最大限行って盛り上げて行こうと思っています。

 (2014年4月19日)