あたまのなか研究室

ピクルス(2代目)とぶらいあん(初代)の研究室です。

『ブライアン・ウィルソン ソングライター』インプレッション

 ブライアン・ウィルソンの音楽遍歴を追った大作ドキュメンタリーがあるという話は、数年前から輸入盤でDVDがリリースされていたことから知っていたのですが、内容がよく判らないことと英語の読解力のなさから購入を控えていたところ、ここに来て日本公開、大阪では限定二日のみ上映ということで、いそいそと出かけて観て来ました。

 原題は、"Brain Wilson:Songwriter 1962-1969"(2010年制作)で、ほぼキャピトル時代の話となっています。60年代だけといっても190分もあり、途中5分のインターミッションがあるのは良心的。(劇映画では3時間あまりくらいじゃ中々休憩は入れてくれません)

 関係者(評伝作者やスタジオミュージシャンデビッド・マークスとブルース・ジョンストン)による証言と、映画やテレビ出演時の演奏映像のハイライト部分が半々くらいの構成。

 「マニア垂涎」みたいな煽りもありますが、全体的に浅すぎず深すぎず(個人的にはやや浅めと感じた)、どちらかと言えば、『ペット・サウンズ』や『スマイル』しか聴いたことがない、または、キャピトル時代を一通り聴いたことがある程度のリスナー向けという印象。
 細かい話、例えばマリー・ウィルソンとの確執は何度も出て来るが泥沼部分までは踏み込まなかったり、『スマイル』のタイトルが最初から『スマイル』かのように話したりするのは長くなるので枝葉末節と不快な部分はカットしたということだと思います。ある程度の熱心なファンなら見聞きした話が多く、マニアには少し物足りないかもしれません。

 しかし、ピアノやギターを弾きながら分析・解説してくれる部分は非常にわかりやすくて知っている話でも面白い。
 "Surfin U.S.A" の替え歌話(ただし裁判の話はない)とか、"Be My Baby" と "Don't Worry Baby"の比較など。
 私が、これら関連本をあまり読んでいないからかもしれませんが、"California Girls" のイントロが「カントリー」だと言う話は言われるまで気づきませんでした。

 また、マニアであっても大画面で、ブライアン・ウィルソンビーチ・ボーイズの映像に大スピーカーから音楽が流れると、聴きなれた曲でも新鮮で、迫ってくるものがあります。また、サビ部分だけではありますが(曲自体フルコーラスで流れることはない)流れる曲と連動して日本語歌詞が同時に読めるのも、映画ならではのなかなかない機会であり、知っている曲でも理解が深まり楽しいものでしょう。

 映像自体は、60年代当時のプロモビデオやテレビバラエティ出演時、彼(ら)の音楽が使用された映画、というファンならおなじみのものが多いように感じましたが、私としては初めて観たものの結構あったので、珍しい映像も含まれていたのかもしれません。

 オーソドックスなつくりですが、本格的にブライアン・ウィルソンの業績をアルバム毎に丹念に追った内容で、ブライアンのドキュメンタリー(のキャピトル時代のもの)としては決定版と言えるでしょう。
 マニア・ビギナー問わず、ブライアン・ウィルソンのファン、ビーチ・ボーイズのファンはもちろん、60年代音楽をふくめ洋楽ファンには必見の、一度は見ておくべきドキュメンタリー映画であると思います。

 なお、現時点で、本作と、その続篇である "Brian Wilson Songwriter 1969-1982(2012年制作)があり、これらはアメリカ版DVDを下記サイト等から入手することができます。英語が出来て、ホームシアターがある方にはとてもおすすめ。
 さらに続篇が制作されているところなのかどうかは不明。気持ち的には1983-2014の三部作(もしくは更に分割して四部作くらい)としてリリース・公開して欲しいと思います。

 <蛇足>

 デビッド・マークスのクレジットが「ビーチボーイズ元メンバー」(字幕)なのはいいのですが、原盤表記では、"THE BEACH BOYS '61-63"とあるのがちょっと可哀想な感じもします。法的には「本家」であるはずの現「(マイク&ブルース)ビーチ・ボーイズ」の存在を、本作品(の制作者)は「正当なビーチ・ボーイズの存在」と看做していない、ということが読み取れますね。まあ個人的には私もそちらに近い気持ちではあるんですけどね。

 <参考>

 公式サイト http://brianwilson-movie.com/
 
 (2014年3月29日)


Songwriter 1962-69 [DVD] [Import]


Songwriter 1969 - 1982 [DVD] [Import]