『灼熱の魂』の問題点について
というわけで「灼熱の魂」観ました。フランス映画と思いきや、カナダ(がメインでフランスとの合作)映画でした。本作ですが、驚きのストーリーをミステリータッチで2時間あまりを一気にみせます。よくできたエンターテインメント映画です。見応えがあります。とても解りやすいです。
しかしながらこの映画には致命的な問題があります。これだけ深刻な内容を扱っていながら深みがないのです。今後の人生が狂うに違いない衝撃的な出来事も次のシーンでは何もなかったかのごとく話が進んでいくようなハリウッド的展開。おそらく原作戯曲の映画化に際しこの手法しかなかったのでしょう。
つまり骨格となる”お話”が強引でリアリティに欠けていることを、深刻な背景と話の勢いで観ている間に気づかせない。そういう意味でこの映画の作り手にはそれだけ力量があると言えます。内戦がどこで行われているのか明示されないのは、この話がレバノンでなくても内戦ならどこでもよかったからです。
今回あえて否定的な側面を書いたのは、一見「深刻な社会問題を扱った、考えさせられる映画」風でありながら、実は思いついた「お話」のつじつまをあわせるために深刻な背景を持って来た、単なる娯楽映画であることを認識してほしかった為です。宣伝は「テンターテインメント」と強調してますけど、ね。
最後に。誤解しないで欲しいのですが、この映画を否定している訳ではありません。娯楽映画として観た場合、夢中で2時間を過ごせることは間違いないからです。また主演のルブナ・アザバル(「パラダイス・ナウ」!!)の圧倒的な演技力が物語とともにこの映画の魅力になっているのも大きいと思います。
(2012年1月14日、ぶらいあんのTweetより)