あたまのなか研究室

ピクルス(2代目)とぶらいあん(初代)の研究室です。

悪魔払いと『尼僧ヨアンナ』

 「ポーランド映画祭2012」を開催中のシネ・ヌーヴォにて『尼僧ヨアンナ』を観ました。

 「悪魔憑き」というのは、大抵女性に憑き男性である神父がお祓いするが、これは「(誘惑に)弱き女を(煩悩に)強き男が助ける=男が女をコントロール(つまり支配)する」という宗教者によるファンタジー的解釈(※1)です。この映画も基本は同じです。

 しかしながら悪魔祓いの方法が「愛と自己犠牲」であるところがこの映画を単なるオカルトものからドラマにまで高めました。男が女を支配するという構図を踏まえた上で観ても、この映画は相当に面白い。映像美の連続で、特にタイトルクレジットシーンは秀逸極まるものです。

 ポーランド映画に限らず史上最も秀逸なエンド(クレジット)シーンが『夏の終りの日』だとすれば、ファースト(クレジット)シーンの最も秀逸な作品は『尼僧ヨアンナ』でしょう。さらに尼僧長の逆さ顔の表情、18人の尼僧が倒れている俯瞰など、息を呑むシーンの連続です。

 今回のポーランド映画祭では、5、60年代の作品がデジタル映像化されていて、映像・音とともに見事に新しく迫力のあるものとなっています。まるで「あえてモノクロスタンダードで撮った新作アート映画」のようです。(もちろん好みはありますので、例えばフィルム至上主義者の方には受け入れられるとは思いませんが)

 『尼僧ヨアンナ』、特に映像が印象的な作品ですが、原作の小説も読んでみようと思いました。

 (※1)日本では昔から「悪霊祓い」はほとんど女性が行うことになっているかのようで面白いですね。母系社会だからでしょうか。

 (2012年12月13日)


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