あたまのなか研究室

ピクルス(2代目)とぶらいあん(初代)の研究室です。

「美しい国づくり」が生み出すもの

 さきほどのニュースでこのようなものを知った。

放射能地域の人、結婚しない方が」公益法人会長が講演(朝日新聞デジタル

 福島市議会の佐藤一好議員らは29日、記者会見し、公益財団法人・日本生態系協会の池谷奉文会長が東京電力福島第一原発事故の影響について話した7月の講演で「不適切な差別発言をし、容認できない」として、訂正を要求することを明らかにした。

 佐藤市議らによると、池谷会長は講演で「福島の人とは結婚しない方がいい」「福島では発がん率が上がり、奇形児が生まれる懸念がある」と述べたという。

 協会側の説明や記者が確認した録音によると、池谷会長は、福島のほか原発事故で一定の放射能汚染を受けた関東地方の県名をあげ、地域の地図を示しながら「放射能雲の通った地域にいた方々は極力結婚しない方がいいだろう」と発言。「結婚して子どもを産むと、奇形発生率がドーンと上がる」などと話した。

 池谷会長は朝日新聞の取材に、「被曝(ひばく)で遺伝子損傷と奇形児出産のリスクが高まることを訴えた」と説明。「一般論として私の見解を話した。差別する意図はなかった」と話した。
http://www.asahi.com/national/update/0829/TKY201208290581.html

 講演した人は、最近公益法人化したという日本生態系協会の会長という人物である。
 http://www.ecosys.or.jp/aboutus/index.html (日本生態系協会の公式サイト)

 どうやら日本生態系協会という団体の思想は「健全な生態系による持続する社会づくり/美しいくにとまちづくり」ということのようである。

 ここで出て来る「美しいくにづくり」。近年「美しい国」とか「美しい日本」とか言う人のうさん臭さは今さら述べることでもないが、この記事とこの公式サイトを見ると、要するに「優れたものだけ次代に残す/劣ったものは次代に残さない」ということのようである。

 上記の発言と重ねあわせて考えると、なんのことはない、ただの優生思想である。


 たまたま今日、こういうニュースもあった。

 妊婦血液で出生前検査 異常99%判明(NHK NEWS WEB)

 妊婦の血液を調べるだけで胎児にダウン症などの染色体の異常がないかどうか99%の確率で分かるとされる新たな出生前検査が、来月、国内の2つの病院で始まることが分かりました。
 検査を希望する人は大幅に増えることが予想され、異常が見つかれば人工妊娠中絶にもつながることから、検査前後のカウンセリングなどの態勢を整えていくことが課題です。

 新たな出生前検査を始めるのは、いずれも東京にある昭和大学病院国立成育医療研究センターです。
 検査は、アメリカの検査会社が去年10月から行っているもので、妊娠10週目以降の妊婦の血液を調べるだけで、ダウン症など3種類の染色体の異常がないかどうか99%の確率で分かるとされています。
 現在、出生前検査として行われている「羊水検査」は、妊婦のおなかに針を刺すため、0.3%の割合で流産の危険性がありましたが、新たな検査は採血だけで済むため、流産の危険性がなく、同様の検査はアメリカやヨーロッパなどで広がりつつあります。
2つの病院のほか、今後、導入を検討している病院の医師らが31日、研究組織を立ち上げ、検査を行う際の共通のルールを作ることにしています。
 この中では、検査の対象は、胎児の染色体異常のリスクが高まる35歳以上の高齢出産の妊婦などとしたうえで、検査の前に専門の医師らが30分以上カウンセリングを行うことや、検査後も小児科医らが妊婦のサポートを続けていくことなどを検討しています。
 費用は保険が適用されないため21万円かかりますが、高齢出産の妊婦が増えていることなどから、検査を希望する人は大幅に増えることが予想されます。
 異常が見つかれば人工妊娠中絶にもつながることから、正しい情報に基づいて妊婦が判断できるよう検査前後のカウンセリングなどの態勢を整えていくことが課題です。

 現在の出生前検査は
 子どもが生まれる前に病気などがあるかどうか調べる出生前検査は、現在、国内では▽「羊水検査」▽「絨毛検査」▽「母体血清マーカー検査」などが行われています。
 専門家によりますと、こうした検査を受ける妊婦は、年間の出産数およそ100万件のうち3%前後に当たる3万人と推計されています。
このうち、羊水や絨毛といわれる組織を採取して調べる「羊水検査」と「絨毛検査」は、胎児にダウン症などの染色体の異常がないかどうか確定診断ができます。
 しかし、母親のおなかに針を刺すため、羊水検査は0.3%、絨毛検査は1%ほど流産の危険性があるほか、破水や出血のおそれもあり、母体への負担もあります。
 費用は保険が適用されていないため、10万円から15万円かかります。
 「母体血清マーカー検査」は、今回の新たな検査と同じように妊婦の血液を調べるもので、流産などのリスクはありませんが、ダウン症などの確率が分かるだけで確定診断はできません。

十分な情報提供の態勢を
 新たな検査が始まることについて、日本ダウン症協会の玉井邦夫理事長は「海外の動向からいずれ日本でも検査が必ず始まると思っていた。新しい技術ができ、それによって分かることを知りたいと思うのは個人の権利なので、検査の導入は否定できないが、ダウン症の子どもたちや家族を否定するような世の中につながることは絶対にあってはならない。検査が簡単になっても結果の重みは変わらないので、安易な気持ちで検査を受ける妊婦が増え、混乱が広がることが懸念される」と話しています。
そのうえで、「今回、検査を始める病院が共通のルールを作ることは評価できるが、今後、導入するすべての病院がルールを守るようチェックしていくべきだ。妊婦やその家族が正しい情報に基づいて考えられるよう、元気に暮らしているダウン症の子どもをよく知る小児科の医師らが、十分な情報を提供できる態勢を整えてほしい」と話しています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120829/t10014608571000.html

 このニュースは、日本生態系協会の人々を諸手を挙げて大喜びさせたことと思う。
 「これで、次の世代には劣った(日本)人が減る」と。

 こういうことを考える人々は、医学技術の発達により、さらに多くのものを求める。
 そして、生まれつき何らかのハンディを持った人を疎外するだけではあきたらず、ゆくゆくは(DNA解析技術だとか何とかにより)「優れた人だけを産み分ける」方法を発見することは間違いない。(別に彼らが発見する訳ではないだろうが)
 「優れた人だけを産む」ということは「特に取り柄もない人々」は産まない、もしくは産んだとしても Working Class People としての一生が約束されるということである。

 0.1%程度の飛び抜けて優れた人間が、99.9%の普通の人々を支配する社会。
 それはどんな未来だろう。口には出さないが「美しい国」をつくる人はおそらくそれをバラ色だと思っていることだろう。

 そんなことを考えていると、いささかうんざりする。

 こういう団体は、自然環境においての生態系、ということは書いているが、人間をどうするか、ということについては何も書いていない。
 人間も自然環境における大きな要因であるにも関わらず書いていない。(こども環境管理士というのがあるがよく判らない。)
 書いていないから、彼らの中に潜在的優生思想があったとしても、直接表に出てくる訳ではない。

 しかし、はっきり言ってどうにも気持ちが悪い。

 こういう団体が具体的に政治に介入、もしくはシンクタンクとして重宝されるようにならないことを、切に願うばかりである。

 (2012年8月29日)