あたまのなか研究室

ピクルス(2代目)とぶらいあん(初代)の研究室です。

(恐らくは、まだほとんどの人が認識していない)「iTunes Match の25000曲問題」

 iTunes Matchが日本でもスタートするというニュースが流れたのはこの5月2日のGWのこと。

 詳細の内容はアップルのサイトをご覧頂くとして、これは有料であってもなかなか利便性の高いサービスだと思いました。
 (http://www.apple.com/jp/itunes/itunes-match/

 Windows PCやMaciOS端末(iPhoneiPadなど)を複数台持っている人は多いでしょうし、端末を新しくする度に音楽データを移行している方もおられると思います。音楽ファイルの高音質化(本当はこの表現は語弊があるのであまり使いたくないのですが「圧縮率の低いファイル化」と言ってもピンと来ないので)も自動で出来るし、バックアップという意味でも安心できます。

 しかし、引っかかったことがひとつありました。

 iCloudに保存できる曲は最大25,000曲ですが(iTunes Storeで購入した曲が含まれる場合はそれ以上)」(同サイトより)

 私のようにiTunesで購入することはほとんどなく、音楽CDを大量にリッピングしているという方はおられると思います。
 (そうでない方は、このページを読み飛ばしてもらって全く問題ありません)
 そんな方は「自分はCDからのリッピングが25000曲以上あるからこれで引っかかってしまうなあ」と思われたことと思います。

 これが一般に言われる「iTunes Match の25000曲問題」である、そう思っている方が多いと思います。

 ところが、私の認識はちょっと違います。私の言う「25000曲問題」というのは「アップルが表現するところの「25000曲制限」の定義は「曖昧」ではないのか」という問題です。

 なぜそう思ったのかというのはもちろん理由があります。それは5月7日の朝日新聞Webに掲載された松村太郎氏による記事の中にありました。

 「[CNET Japan] 新MacBook Airの登場、AppleSamsung裁判の評決--松村太郎のApple一気読み」(朝日新聞デジタル、2014/5/7付)
 (http://www.asahi.com/tech_science/cnet/CCNET35047507.html

 そこでは、アップルのいくつかの話題のなかで「iTunes Match、いよいよ日本でも始まる」という中見出しの記事にこういう記載がありました。

 「また、iTunes Storeにない楽曲は、最大2万5000曲までアップロードし、クラウド管理が可能になる。」(同サイトより)

 ん?これだと、自分がiTunes Storeで買っていない、CDからリッピングした曲でもiTunes Store にある曲とマッチすれば、それは「25000曲にカウントされない」ことになる!!
 それならば、3700万曲あるというiTunesだから(よほどマニアックな曲でない限り)かなりの確率でマッチするのではないか。すると25000曲という制限にかかるというのは相当に限られた場合だけになるのではないか。ここに希望の光がさしたように私は感じたのです。

 しかしながら安心は出来ません。これ以外の記事では一切このようなことが書かれておらず、冒頭のアップルの表現をそのまま引用した記事ばかりだったのです。これはどっちが本当なんだろうと思い、私は筆者の松村さんに直接問い合わせてみました。

 すると「米国でのリリース時、iTunes Storeにない、ユーザーがアップロードする楽曲が最大25000曲、ということでした。マッチした曲は購入してなくても、カウントされないという解釈です。」という回答を頂きました。(松村太郎さんにはここで改めて感謝申し上げます)

 確かに理屈としては「サーバーにアップロードする曲だけに制限をかける」方が仕組みとしては自然のような気がします。

 しばらくネットで「25000曲問題」について検索してみましたが、「25000曲で引っかかったのでどうすればいいか」という記事ばかりで「25000曲制限の定義」について書かれているものは見当たりませんでした。(私が調べた以外ではあるのかもしれませんので、ご存知の方がおられればご教示頂ければ幸いです)

 そして、iTunes Matchの米国でのサービス開始時点での記事にたどり着きました。

 「日本未上陸、Appleクラウド音楽サービス「iTunes Match」を試す」(Internet Watch、2011/12/17付)
 (http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/20111227_501082.html

 その文中には、以下のような記載がありました。

 「Apple利用規約によれば、クラウド上で所有できる曲は、iTunes Storeで買った曲、およびiTunes Storeのライブラリとマッチした曲は無制限、アップロードの上限が2万5000曲となっている。」(同サイトより)

 やはり、少なくとも米国でのサービスにおける「25000曲制限」は、アンマッチ&アップロード分だけ、ということです。

 となると、一体どういうことでしょう。これはふたつのことが考えられます。

 1)日本における運用規定も米国と同じである。アップルが曖昧な表現をしているだけ。

 2)日本は米国と違う運用規定(アンマッチ分だけでなくiTunes Store購入以外の全てが制限対象)である。

 一体どちらなのか、現時点では判りません。私としては1)であると祈るばかりです。
 ただし、冷静に考えてみると幾つか怪しい点も浮かび上がります。

 1)の場合、アップルがなぜ「曖昧な表現」をするかの理由が判らないということ。

 2)の場合、米国と比較して日本での運用開始が大きく遅れたこと、価格に違いがあることを考えると、「著作権上の問題」から「制限の条件」が米国と日本で異なるという可能性があるということ。

 ああ、何だかイヤな予感がしてきました。1)の場合だと、制限に引っかかる人というのは相当なコレクターであると思われますが、ネットで検索すると「25000曲制限にかかって」いると思われる人の書き込みが多いのです。そんな相当なコレクターが沢山いるのかとはちょっと疑問があり、それならば2)の方が遥かに自然だと思われるのです。

 うーん、困りました。

 とりあえずもうしばらく、アップル公式見解の動向を見ていようかと思います。最後は日本の利用規約を確認するしかないと思いますが。


 <付記:クラウド音楽の問題点>

 ところで、そもそも、果たしてiTune Matchを導入するメリットがどこまであるのか、という基本的な疑問があります。オーソドックスな懸案は以下の通りです。

 ・ストリーミングは途切れる可能性がある。
  (例えば電車の中とか、基地局の切れ目やなどアンテナ受信感度が局所的に悪い場合にて移動している時)

 ・ダウンロードは時間がかかる。またiOS端末のストレージを圧迫する。あるいはいちいち削除する必要がある。そして再ダウンロードすることになる。要するに手間がかかる。

 上記2点を考えると、160GBのiPod Classic に全部入れておいて聴きたい曲を聴く方が早くて手間もかからない、というのが大半のユーザの結論になるような気がします。しかし160GB(※実際の領域は148GB程度です)に収まらない熱心な音楽ファンの場合は・・。(ここで、再び冒頭に戻ることになります)

 ※もちろん、160GBを越えても対応する手段がない訳ではなく、単にジャンル毎にiPod Classic を複数台に分割するという荒業もあります。私は今までずっとこの方向で考えていたのですが、色々躊躇している間に、どんどん手持ちの未開封CDの山は増えるばかりなのでした。

 (2014年5月11日)