あたまのなか研究室

ピクルス(2代目)とぶらいあん(初代)の研究室です。

映画料金4月「値上げ」動向について分析する

 本研究室では「映画料金が4月から値上げされるのかどうか」について、昨日まで4日連続で関連記事を掲載しました。
 これは大手シネコンがプレスリリースで発表しているもの以外については本研究室独自の取材によるものです。
 (3/5以外の記事は、現時点でネットでもほとんど出ていない情報のはずです。特に3/3、6の記事は労作)
 今後も随時更新していく予定ですが、最初の取材を一段落して、今回感じたことを少し分析しながら書きたいと思います。

 当初は単に「4月から映画料金どうなるのかなあ」と思ったところから始まったのですが、いろいろ調べていくうちに「何かヘンだな」と思うようになりました。
 最初にTOHOシネマズに問い合わせとき(劇場はそうでもないのに)の歯切れの悪さ。どうも1/30の発表以降内部でもいろいろ揉めているのではないか、と思っています。

 要は「定価据え置きで、サービス料金は(すべて一律)に、+100円!」と発表したものの、抗議の声が高かったのか、内部でも異なる意見があったのかはわかりませんが、「サービス料金(のなかでも特定のものだけ)+100円」にトーンダウンしているようなのです。

 おそらくは最初に「障がい者割引は価格据え置きにすべき」という声があっただろうことは想像に難くありません。
 それは「社会的弱者に優しい(厳しくない)企業」を印象づけるという効果を考えてのことでしょうが、「実際のところ対象となる観客が全体からみればごくわずかなので、1000円でも1100円でも収益には全く影響がない」という現実を踏まえた上のことでしょう。

 更に「シニア料金」は「通常料金なのか割引料金なのか」という問題もあります。
 TOHOシネマズ劇場公式サイトでは、シニアは「割引サービス」、「障がい者割引」は「通常料金」欄に記載されていますが、何だかすっきりしません。
 基本的に「サービス料金」は「日時」によって割引されるものを対象としています。では「シニア」という「立場」は「高校生」という「立場」とどう違うのか。よくわかりません。
 「女性」というのは「立場」ですが、「レディースデイ」は「日時限定割引」です。
 私は「年齢や立場で一律の料金」というのは「サービス料金ではない」と思いますが、そうでないとしても「どちらともとれる解釈ができる」ところが問題です。
 「近年拡大するシニア層」の料金を据え置くか値上げするかは、「客離れをとるか収益をとるか」という企業の利益に大きく直結する難しい選択だと思います。
 なので、「ファーストデイ、シネマズデイ」や「レディースデイ」を値上げしてもシニア料金は現状据え置きの可能性は充分にあるだろうと思います。(「夫婦50割引」も「シニア」に準じると考えられるでしょう)

 あと、これも「サービス料金」と考えられるものに「レイトショー」「シネマイレージデイ(会員割引)」があります。
 これらは「千円ポッキリ価格」ではない(「レイトショー」1200円、「シネマイレージデイ」1300円)ので、「+100円」であっても割高感が強くなるため、値上げせず据え置きになる可能性が高いとみています。
 それは、おそらく上記の「千円料金」の割引ほど利用が多くないという収益上の影響を考慮してのことだ思います。

 以上は、ある直営劇場から回答してもらった内容と一致します。劇場毎に違いはあるのかもしれませんが、TOHOシネマズ全体の方向としてはこうなる可能性が高いのではないか、と思っています。(※下記リンクの3/3付記事参照)

 さて、更に波及する問題として、他社(特にシネコン)への影響があります。
 1/30にTOHOシネマズが「一見結論に見える大方針」を発表してから、他の大手シネコンはほぼ一ヶ月後に「右へならえ」の発表を行っています。(※下記リンクの3/5付記事参照)
 しかしながらそれは「大方針」を「サービス料金は一律+100円」と受け止めた結果であるように思います。
 まだどこも詳細を発表していませんが、プレスリリースを読む限り「シニア」含めてサービス料金は値上げというスタンスです。
 イオンシネマは「ハンディキャップ割引」以外は「1000円料金」を廃止しています。(※下記リンクの3/4付記事参照)
 つまり、シネコン他社は「横並び」にするつもりで則った「大方針」を「読み違えた」のではないか、ということです。

 では今後どういうことが起きるのか。

 あくまで可能性ですが、TOHOシネマズだけが「シニア料金」や「レイトショー」等を据え置きにして、他社は「障がい者割引」をのぞいてサービス料金は全て一律「値上げ」するという事態。

 そうすると「全社一律値上げ」だと思い込んでいた他社は動揺するでしょう。
 観客がTOHOシネマズに流れかねないからです。
 場合によっては、再値下げするところも出る可能性があります。

 ただし、他社もほとんど詳細は発表していないので、TOHOシネマズが行うという最終確定の発表(3月中旬頃)を受けてから慌ただしく詳細を発表するのかもしれません。
 その場合は、前回発表した概要に記載した内容と異なっている場合が考えられます。

 いずれにしても、各社他社動向をにらみ合いの状況です。ある種チキンレースと言ってもいいでしょう。
 ミニシアターにとっては、シネコン以上に死活問題です。
 単純に「定価据え置き、サービス料金+100円」を行っていたら、映画館離れがますます加速するのでは、と恐れているのではと思われます。
 なので、大方針に準じながらも各ミニシアター独自の特色や割引を打ち出そうとしているところが見られます。(特に独立系や街の映画館)

 今回は、関西ミニシアターの4月価格改定情報を調査しています。(※下記リンクの3/6付記事参照)
 ここで印象的なのは、シネ・ヌーヴォとシネ・ピピアの対応です。
 どちらも「サービス価格は+100円」にしてはいますが、その代わりに「会員価格を1000円」にしています。
 (これはシネ・ヌーヴォでは「据え置き」ですが、シネ・ピピアでは「現行1200円と1000円」なのでいわば「値下げ」であるということに注目したいと思います)

 これは「会員になってもらうことで観客にも劇場にもメリットがある」という「映画館離れを防ぐ非常に優れた方法」だと感じます。
 また、塚口サンサン劇場や神戸の二番館では「4月はそのまま据え置き」という方向性を打ち出しています。
 ミニシアターはまだまだ検討中のところが多いのですが、がんばって独自色を出して観客を魅了して頂きたいと思います。


 <付記>

 最後に、今回気づいたことですが、シネコンに近い、いわゆるチェーン系のミニシアターが、関西では「テアトルシネマグループ」だけになっていた(「テアトル梅田」「シネ・リーブル梅田」「シネ・リーブル神戸」)ということに気づきました。
 ミニシアターは、いまや「大資本企業」にとっては「儲からない商売」であることが自明なのかと思うと、複雑な気持ちにならざるを得ません。

 (2014年3月7日)

 <追記> 

 1月30日に発表されたTOHOシネマズの価格改定に関する案内について、3月10日現在、この文章には当初記載のなかった以下の一文が追記されています。ただし追記されたことについては全く触れられておらず、いかにも最初から記載されていたかのようです。

 「※各料金の詳細につきましては3月中旬以降に、ホームページ等でご案内させていただく予定でございます。」 

 <追記>

 3月20日になって、TOHOシネマズより正式に4月改定料金の詳細が発表されました。
 「障がい者割引」をのぞき、サービス料金については、すべて+100円(一人当たり)という内容でした。

 <関連記事>

 「TOHOシネマズ4月「値上げ」についての情報」
  (本研究室、2014年3月3日記事) 
 (http://d.hatena.ne.jp/communicationbrakedown/20140303/1393853955

 「イオンシネマも4月から「値上げ」に」
  (本研究室、2014年3月4日記事)
 (http://d.hatena.ne.jp/communicationbrakedown/20140304/1393948841

 「大手シネコン映画料金4月価格改定情報まとめ」
  (本研究室、2014年3月5日記事、随時更新)
 (http://d.hatena.ne.jp/communicationbrakedown/20140305/1393953842

 「関西ミニシアター映画料金4月価格改定情報まとめ」
  (本研究室、2014年3月6日記事、随時更新)
 (http://d.hatena.ne.jp/communicationbrakedown/20140306/1394103914